朝の海岸で
手を繋いで歩く80代後半と思われるご夫婦とすれ違う時、
突然、奥様が手にしていたススキを私に差し出されました。
驚いて見ると そのきれいなお顔は全く表情を失くし
黙って私に差し出された手はぶるぶると震えて。
「ありがとうございます、せっかくですから一本だけいただきます」と
遠慮がちに申したのですが、奥様はただ黙って差し出しているだけ。
ご主人が穏やかな声で
「ご迷惑でなかったら、受け取ってやっていただけませんか」
小笹の中に咲き残ったヒルガオを幼子のように欲しがる奥様に
「あれは採ってはいけない花だよ」
静かに諭されるご主人に こみ上げるものがありました。
何もなかったように ゆっくりゆっくり歩いて行かれるご夫婦を、
少しばかり羨ましく思いながら見送りましたが
日常生活や ご主人のお心内はどんなだろうかとお察しするのみです。
日の出にはやや遅かったようです。
美しい波模様が現れました。
白化粧をした富士を早く見たいものですね。
いただいたススキを大切に活けましょう。